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彩雲国物語 第1シーズン 第二十一話 君子危うきに近寄らず

アニメ「彩雲国物語」を文章で見たい!という方のために。
(管理人のツッコミつき)


『』=モノローグ
ナレ:=ナレーション

地上波再放送(金曜深夜)にあわせてレビューしています
キャストについては、公式HPを参照のこと

★第21話は幽霊退治のお話です★





ナレ(邵可):
初夏の香りを含んだ風が吹き始め、秀麗が紫州を離れる時が、いよいよ二日後に迫っていた。



紅邵可邸。
庭を眺めている絳攸。
(なんでここにいるのさ)
秀麗「絳攸様、どうぞ。卵を練りこんだ黄身餡をいれたお饅頭なんです。あたたかいうちに」
絳攸「ああ、すまん」
持ってきてくれた饅頭を一つ口にして。
絳攸「しばらく秀麗の手作り饅頭は、食べられなくなるな」
秀麗「作り方、お教えしましょうか?」
絳攸「うん……ではなくて、話しておかねばならないことがある」
秀麗「?」

庭の東屋で。
絳攸「1年前、お前が囚われていた時のことについてだ」
秀麗「…私は、自分が毒を盛られて、仙洞省に捕らえられ、主上に助け出された…それだけしか覚えていません。あの時、誰も私に真実を教えてはくれませんでした。だから触れてはいけないのだと思って、聞かずにいたのですが…」
絳攸は秀麗を振り返る。
絳攸「お前は官吏だ。もう守られるべき者ではない。だから話す……聞くか?」
秀麗はうなずいた。

絳攸「あの事件は、すべて亡くなった茶太保、茶鴛洵が仕組んだことだった」
秀麗「え?」
絳攸「霄太師の上を行きたい、その野心ゆえに、茶太保は主上を亡き者にし、別の王を立てようとした。だが思わぬところから足がついた。香鈴だ」
秀麗「!」
絳攸「香鈴は、一途に茶鴛洵を慕っていた…主上はお前が後宮に入ってから変わった。 茶太保はお前のことを面白く思っていなかったのだろう。だから香鈴は、自分も役に立ちたいと、命じられもしないのにお前に……毒をもった。気づいていたか?」
秀麗「…いえ」
絳攸「だが香鈴はためらってもいたのだろう。手口は見え見えだった」
秀麗「……私は、分かりませんでした。香鈴を疑ったことなど一度もなかった」
絳攸「その後茶州へ戻った香鈴を、燕青が連れてきている。お前に直接謝りたいそうだ。会うか会わないかは自分で決めろ」
秀麗「……はい」



街道にて。
影月と歩いている秀麗。
影月「どうかしたんですか、秀麗さん」
秀麗「あ、うううん、茶州って、どんなところかなぁって」
影月「ああ、そうですね」

川にかかっている橋の上で。
影月「茶州は茶一族が実権を握ろうとしてきた土地と聞いています。前の州牧だった燕青さんも、何度も刺客を送られたというし、いくら命があっても足りないかもしれませんね」
秀麗「さらりと言うわね影月君」
影月「それでも誰かが行かねばならない。それが僕たちだったということだけのことです。一緒に頑張りましょうね、秀麗さん」
秀麗「強いなぁ、影月君は」

と、その時……
影月「あ」
秀麗「うっ」
あの怪しげな笛の音と同時に、相変わらずド派手な青年が。
影月・秀麗「龍蓮(さん)!」
龍蓮「今のは我が心の友との再会を祝する曲だ」
秀麗「ちょっと! なんであんた進士式すっぽかしたのよ!」
龍蓮「風に誘われ旅に出ていた」
秀麗「旅ぃ!? なに考えてんのぉ!?」
影月「ま、まぁ秀麗さん、龍蓮さんにもいろいろ思うところがあったんですよ、多分…」
秀麗「ないわよ!」
影月「それより、夕ご飯のおかずを買って帰りましょう。龍蓮さんも一緒にどうですか」
龍蓮「んー、甘酸っぱい酢豚が食べたい」
秀麗「何注文してるわけー!?」
影月「あ、僕も食べたいです、酢豚ー」



紅邵可邸に帰ってきて。
龍蓮「んー、甘酸っぱい香り」

台所で酢豚を作っている秀麗。
秀麗「まったく、あの孔雀男は」
と、そこへ。
燕青「よう」
影月「あ、燕青さん」
燕青「姫さん、忙しいとこ悪いけど、前に話した連れを案内してきてるんだが、会ってやってくれっかな」
秀麗「……会うわ」

秀麗は燕青と共に客が待つ部屋に入る。
秀麗「お待たせしました」
香鈴は緊張した様子で座っていたが、立ち上がって。
香鈴「あ、あの! ご無沙汰しております」
秀麗「ええ、久しぶりね、香鈴」
香鈴「あ、紅貴妃様にお茶を入れていただくなど! 私が」
手を伸ばした拍子に、お茶をひっくり返してしまう香鈴。
燕青「うわぁっ! っちっちち」
香鈴「すみません! 燕青様」
秀麗「大丈夫?」
燕青「大丈夫だよ。ちょっと冷やしてくる」
そう言って、部屋を出て行く燕青。
香鈴「紅貴妃様と初めてお目にかかった時も、私、同じように粗相してしまいましたね」
秀麗「秀麗でいいわ」
香鈴「あ、はい。申し訳ありません」

香鈴「紅貴妃…いえ、秀麗様は、茶州の州牧になられるそうですね」
秀麗「ええ……あ、茶州の様子はどう?」
香鈴「それが、混乱しておりまして。紫州まで来たのも、嘆願書を持って参ったのです」
秀麗「嘆願書?」
香鈴「私は、英姫様…茶鴛洵様の奥様の侍女をしていたのですが、その英姫様が軟禁され、孫娘の春姫様も、かくまわれているような状態で…」
秀麗「……それはなかなかすごい状況だわね」
香鈴「秀麗様、本当に茶州へ行かれるのですか?」
秀麗「え? ええ」
香鈴「そんな、あんまりです。主上がお命じになったのですか? 秀麗様が後宮からお下がりになった腹いせに?」
秀麗「違うわ。私と、もう一人の州牧に命じられた影月君に、望みを託してくれたのよ」
香鈴「でも、危険だと分かっているところにわざわざ…」
秀麗「何か考えがあってのことだと思うわ。それより香鈴、他に何か話があるんじゃないの?」
香鈴「あ、いえ、その、私は……秀麗様の茶州への旅に、同行させていただきたいと…」
秀麗「え?」
香鈴「道中にたくさんの危険があると思われます。ですから、命に代えても秀麗様をお守りしたいと…思って……だめ、でしょうか」
秀麗「だめではないけれど」
香鈴「では! あの、お考え置きください。それから、他にもお話したいことがたくさんあるのですが、それは、おいおい…」
秀麗「分かったわ」

香鈴「それでは、今日は失礼させていただきます」
香鈴を見送る秀麗。

屋敷の門を出たところで。
燕青「香鈴」
香鈴「あ…」
燕青「話は済んだのか?」
香鈴「それが…言い出せなくて…」
燕青「そうか。そう言えば、俺が姫さんと初めて会ったのはここだったな。行き倒れてた俺を拾って、飯食わせてくれたんだ。どこの誰とも知らず」
香鈴「秀麗様らしい」
燕青「姫さんは懐が深い人間だ。正直に打ち明ければ、理解してくれるんじゃねぇかな」
香鈴「……はい」

部屋では、山のように盛られた酢豚を前に、食事をする三人。
酢豚を食べている龍蓮を見ながら。
影月「良かった、龍蓮さんが無事で。二番目で合格したのに、進士式に来ないから何かあったのかと思いました。秀麗さんは全然心配ないって言ってたんですけど」
龍蓮「ん? 心の友」
秀麗の箸を持つ手がぴくりとなる。
秀麗「なに?」
龍蓮「相も変わらずそなたの作る菜は大変美味である」
秀麗「それは良かったわ」
龍蓮「そこで一つ提案がある」
秀麗「なに」
龍蓮「やはり私専用の料理人にならぬか?」
秀麗「なりません」
龍蓮「~~~」
影月「ああ、でも、会試の時はすごかったですねぇ。龍蓮さんいっぱい伝説を作りましたよねー」
秀麗「呪いの13号棟とか?」
影月「え、その…」
龍蓮「ほー、私が泊まった予備宿舎は呪われていたのか~」
秀麗「違うわよ! あんたが泊まったせいでそう呼ばれるようになったの。あんたが吹く笛で精神がかき乱される受験者が続出、訳のわからない会話に付き合わされて、7人の試験担当官が辞表を提出」
影月「なのに当のご本人は榜眼合格ですもんね」
龍蓮「ん?」
秀麗「藍将軍が嘆いてたわよ。会試直前まで自分の所に監禁しておくべきだったって」
龍蓮「愚兄その4の屋敷は無駄に広く、無駄にきらきらし、私の美観とまるでそぐわぬ。その点この屋敷は、悲しい努力が垣間見える修繕跡といい、程よく生えた雑草といい、自給自足の精神の表われである裏庭の畑といい、全て及第点だ」
秀麗「余計なお世話よ」
龍蓮「心の友その2、もっと食事にふさわしい楽しげな話題を提供して欲しい」
影月「楽しい…えー、そうですね、呪われているといえば、仙洞省のあたりに幽霊が出るとか」
秀麗「幽霊?」
龍蓮「食事にふさわしくはないが興味深い」
影月「何人も見た人がいるそうです」
龍蓮「それはぜひ退治したい」
秀麗「はぁ?」
龍蓮「今夜決行しよう! 今宵夜が更けたら仙洞省の前に。心の友その1その2、集結するのだ。ではまた夜に」
秀麗「ちょ、ちょっとぉ!」
龍蓮はさっさと部屋を出て行ってしまう。
影月「…赴任する前に幽霊退治ですか」
ため息をつく秀麗。
(ところでその酢豚の山、食べきれるの?)



結局、仙洞省へ向かう秀麗と影月。
秀麗「まったく、あいつと関わりあうとろくなことがないわ」
影月「でも秀麗さん、ちょっと元気になりましたよね」
秀麗「え?」
影月「なんだか沈んだ様子だったのに」
秀麗「まさか、あの孔雀男が、私を元気づけるために幽霊退治を言い出したっていうの?」
影月「かもしれません」
その時。
兵「誰だ!」
駆けつけた兵が二人を見て。
兵「あ、杜官吏と紅官吏でいらっしゃいましたか。このような時間に何をしていらっしゃるのですか」
影月「えっと、あのぉ…」
すると別の声が。
劉輝「余が招いたのだ」
秀麗・影月「!」
劉輝「赴任先に関して、内密の話があったのでな」
兵「はっ、ご苦労様です。では」
去っていく兵士たち。
ほっとする影月と秀麗。
劉輝「こんな時刻にどうした」
秀麗「え、そのぉ」
劉輝「夜這いか!?」
秀麗「違うわよ」
劉輝「そんなに即座に否定しなくても…」
秀麗「あなたこそ、こんなところで何してるわけ?」
劉輝「え、あ、いや、眠れなくて散歩を……で、そなたたちは」
秀麗「そうだ、龍蓮見なかった?」
劉輝「藍龍蓮か。いや彼は、進士式を欠席した後、行方知れずだそうだが」
秀麗「今日うちで酢豚を食べていったわ」
劉輝「なに?」
秀麗「その龍蓮が、幽霊退治をしたいって言い出して…」
劉輝「幽霊?」
秀麗「とにかく、仙洞省の前で龍蓮と待ち合わせしているの。騒ぎを起こさないうちに合流しないと…」



仙洞省の前。月を眺めている龍蓮。
一つ息をついて、笛を吹こうと構えたその時。
秀麗「待ったー! 笛は吹かないでー!」
龍蓮「遅かったな、心の友その1、その2」
秀麗「ってあなた、よく王宮内にとがめられもせず入れたわね」
龍蓮「藍家の通行手形を見せたらすんなり門番は通してくれた」

そこへ。
劉輝「会試以来だな、藍龍蓮」
龍蓮「兄上たちに伝言は伝えた」
秀麗「何の話?」
劉輝「会試後2日で、余は彼に会いに行った。そのことを藍家の当主である兄上たちに伝えて欲しいと頼んだのだ」
秀麗「わざわざ王様が、一受験生に会いに行ったの?」
影月「藍家は強い力を持ちながら、政治に関わらないようにしていると聞きます。その藍家に礼を尽くしたということでしょうか」
劉輝「それもあるが、彼の答案が見事だったから、会ってみたくなったのだ。それより、幽霊退治はどうするのだ」
龍蓮「もちろん見つけ次第退治する」
劉輝「どうやって」
いきなり笛を吹き始める龍蓮。
秀麗「だからその笛吹くのやめて!」

劉輝「それにしても現れぬなぁ、幽霊は」
影月「噂では仙洞省のあたりに現れるということでしたけど、あくまで噂ですから」
劉輝「君子危うきに近寄らずという。幽霊退治はやめて、余の部屋に来ぬか。夜食でも用意させよう」
秀麗「そうね。ではお言葉に甘えて。龍蓮、いいわね」
龍蓮「では、怪談話でもすることにする」
仙洞省を去っていく四人。
劉輝はちらりと庭に視線を投げて、踵を返した。

…庭の奥にいたのは、静蘭。



劉輝の部屋。
劉輝「確かに、仙洞省に幽霊が出るという噂は時折聞くが…」
秀麗「仙洞省ね…この国に昔、8人の仙人がいたっていう話は、よく寺子屋で子供たちに聞かせたけど」
影月「彩八仙ですね」
秀麗「ええ、そういう不思議な話、子供は大好きなのよね。藍色、紫、紅(あか)、碧(みどり)、黄色、白、黒、そして茶色」
影月「子供の頃は、よく彩八仙ごっこをして遊びましたね」
秀麗「そうなの?」
龍蓮「8人の仙人は今も誰かの体に入って生きているというなぁ」
秀麗「誰かの体に…そうやって今も、この国を助けてくれたらいいわね。仙人が」
劉輝「いいのか?」
秀麗「ええ。私ね、子供の頃は体が弱かったの。でも母様が亡くなった後、随分と丈夫になった。だから、母様の命が私の中に入ったのかしらって、時々考えるの。そうして、私を助けてくれてるんだって」
劉輝「秀麗の母上は、今でも秀麗の中で生きているのだな」
秀麗「そう思うと、心強いでしょ?」
影月「んー…」
秀麗「あら、影月君の体の中にもいるじゃない。助けてくれる仙人」
影月「ええっ」
秀麗「優しい影月君を助けるために、陽月君が生まれたのかも」
龍蓮「心の友その2の中に、心の友その2.5がいるのか?」
影月「お酒を飲むとね、出てくるの」
影月「あああ、その話はやめてくださいー」

龍蓮「まあ、旅をしていると不思議なことや怖い目にはしょっちゅう遭うが、ある小さな街で宿を取った時のことだ。夜眠っていたのだが、誰かに見られているような気がしてふと目を開けた。すると、天井にたくさんの目が浮かんでいて…」
秀麗「ええっ」
影月「なんだか今晩眠れなくなりそう」
龍蓮「またある夜、なぜか部屋の隅に女がいて、その女の顔といったら世にも恐ろしく…」
劉輝「やめろ! それでなくとも、余は暗いところが苦手なのだ」
秀麗「ああじゃ、もう遅いし、帰りましょうか」
影月「そ、そうですね」
龍蓮「まだまだ! 話はこれからなのに」
秀麗「もうしなくていの!」
劉輝「余を置いて帰るのか!?」



仙洞省の庭を抜けて帰る秀麗・影月・龍蓮。
影月「主上は大丈夫でしょうか」
秀麗「だからって、泊まるわけにはいかないわよ」
龍蓮「帰る前に、一応悪霊退散の笛を吹いておこう」
秀麗「ああちょっと…」
笛の音は無常にも響き渡り…
と、その時。

「その笛はやめてくれ」

一人の青年が、彼らに声をかけた。
秀麗「あ、すみませ…」
青年「相変わらずだな、藍龍蓮」
秀麗「え?」
黙っている龍蓮。
青年「そなたが杜影月か」
影月「は、はい」
そして秀麗を見て。
青年「よもや、そなたが茶州の州牧として赴くことになるとはな」
秀麗「あ、あの、失礼ですがあなたは」
青年「国を思うものは、必ずや彩八仙が守るであろう」
そういう青年の体はぼうっと光り、空中へ…
そして煙のように消えた。

呆然としている二人。
影月「…出ましたね」
秀麗「…ええ」

龍蓮「心の友その1その2、また会おう!」
影月「ええっ」
秀麗「退治しなくていいの?」
龍蓮「君子危うきに近寄らず」
そう言って、藍龍蓮は去っていく。

庭の木の下にいるのは壷を抱えた一人の老人。
(通称くそじじい)

笛を吹きながら庭を横切っていたが。
龍蓮「笛を吹いて悪霊を退散させようと思ったが、笛を吹くと悪霊が現れる」

その龍蓮の前に立っていたのは、紫劉輝。

劉輝「そなたに頼みがある」
劉輝は懐に手を入れた。
劉輝「新州牧のために、いずれこれを土産として会いに行ってもらいたい。そなたが適任であろうと思ってのことだ。余自身でそなたを動かせはしないが、彼らのためとなれば話は違う。気が向いたら、放浪先での話を書き送ってくれると嬉しい」
龍蓮「愚兄にも言わずか……ふ、楸兄上も信用のない」
劉輝「心から信頼している。だが、楸瑛はそなたと違って、精神的に藍家のくびきから離れられない。余は七家の意思の関わらぬ、駒がほしい」
龍蓮「王の動向は、藍家当主である三人の兄上に筒抜けだ」
劉輝「かまわない。そなたが藍龍蓮の名を継いだあと、三人の兄上は当主の座を分け合ったという。そなたが世間を見ることなく、誰とも関わりにならないうちに、当主になることを避けたのだろう。藍家が大事にしているそなたに、余がこの頼みをしたという事実が重要なのだ」
龍蓮は劉輝に向き直り、手を差し出す。
龍蓮「友を訪れるのに、その土産だけでは風流を欠く。季節は夏か初秋か。梨もつけることにしよう」
劉輝はその手に“土産”を渡し。
劉輝「朝廷は藍家がいなくてもやっていける。藍家は確かに重要だ。だが、眠れる龍たちがこのまま起きずともなんら問題はない。だが、龍が目覚め、再びその力を貸してくれるなら、喜んでその手を取ろう」
龍蓮「…承った」

劉輝「藍龍蓮、本当に官吏になるつもりはないのか」
龍蓮「ない」
劉輝「藍家の当主になるつもりは?」
龍蓮「以下略」
少しうつむいて。
龍蓮「私は、そういったものを望んではいけないのだと思う」
そう言って、笛を吹き始める。
劉輝は静かにきびすを返した。



王宮の庭院の東屋で、杯を傾ける青年が一人。
劉輝「お帰りにならなかったんですか、兄上」
静蘭「多分戻ってくると思ってね。だが“兄上”はやめなさい。私も敬語になりますよ」
劉輝は慌てて。
劉輝「ああ、いや、やめますやめます」
そう言って自分も座る。
静蘭「藍龍蓮はどんな少年なのだ。やはり藍将軍に似ているか?」
劉輝「似ています。でも楸瑛よりも深い。変人という評判ですが、私にはまともに見える。けれども、それさえも彼の真実ではないような気がします」
静蘭「まさに藍龍蓮……藍家そのもののような若君だな」

静蘭「さて、行くか」
劉輝「兄上」
確認するかのように。
劉輝「秀麗を頼みます」
頷く静蘭。
去っていくその姿を、劉輝は思わず追いかけて。
劉輝「もう少し、隣で歩かせてください。兄上ともしばらく会えない」



紅邵可邸。やっと戻ってきた秀麗に。
邵可「お帰り。遅かったね。王宮に行くとだけ書置きがしてあるから心配で眠れなかったよ」
秀麗「父様、ごめんなさい」
影月「すみません、ご心配をおかけして」
邵可「夜更けに客も来てね。一緒に起きて待っていてくれたんだよ」
秀麗「…香鈴?」
邵可「いいや」
顔を見合わせる秀麗と影月。

客人とは。
邵可「玖琅だ。私の弟。つまりお前の叔父さんだよ」
(黎深、先を越されました)
玖琅「遅くなったが、国試探花及第にお祝いを申し上げる」
秀麗「あ、ありがとうございます」
玖琅「今まで邵兄上は我々本家がこの家に関わることを許さなかった。けれどこれからは違う。本家でないと降りかかる様々な思惑から君を守れない。守るのは紅家当主と当主名代の私の役目だ。君の行く道を、紅家は全力で守ろう」
頷く邵可。
(よかったね秀麗)



夜明けの仙洞省。
宋太傅「誰もお前が本物の指輪を持っとるとは思ってはおらんだろうな」
壷の中から出てきたのは、あの茶家当主印の指輪!(ホンモノ)
霄太師「……」
宋太傅「蔡尚書に渡った偽の指輪は、お前が作らせて放り込んだものだろう。不正をあぶりだすために」
霄太師は指輪を欄干の上に置いた。
霄太師「まあな」
宋太傅「まったく、何から何まで計算ずくだ」

すると指輪からゆるりと煙が立ち上がり…
それは青年の形になる。

茶鴛洵「久しぶりだな、宋」
宋太傅「幽霊だと若くなるのか鴛洵」
霄太師「この指輪が、こやつの魂を一番留めて置きやすかったんじゃ」
茶鴛洵「国が定まったあとは、茶一族は害にしかならん。お前ときたら、せっかく作ってやった好機を…」
宋太傅「まさかお前、茶一族を滅ぼすきっかけを作るために、主上や秀麗殿殺害を企てたのか」
茶鴛洵「……」
霄太師「だが、他の方法で、新しい州牧たちが茶州を救ってくれるだろう」

茶鴛洵「次は、茶州か……」



自分の部屋の窓から、夜明けを見て。

秀麗『明日は、茶州へ旅立つ日。何があっても、がんばらなくっちゃ』

(やっと茶州へいけるのねぇ)









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