スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。






彩雲国物語 小説、アニメ、ドラマCD、応募者特典情報サイトトップ >彩雲国物語(アニメ) 第1シーズン >>彩雲国物語 第1シーズン 第十五話 親の心子知らず

彩雲国物語 第1シーズン 第十五話 親の心子知らず

アニメ「彩雲国物語」を文章で見たい!という方のために。
(管理人のツッコミつき)


『』=モノローグ
ナレ:=ナレーション

地上波再放送(金曜深夜)にあわせてレビューしています
キャストについては、公式HPを参照のこと

★第15話は李絳攸の過去が分かるお話です★
★李絳攸ファンは必見ですぞ♪今回は百面相です★





ナレ(邵可):
雑事に使われるだけで本来持っている才能を発揮する機会に恵まれない状況のことを、下積みという。

秀麗「はあ、次は向こうの厠を掃除しなくちゃ」
別の厠へ移動する秀麗を見送る絳攸。
窓には別の花が生けられている。

ナレ(邵可):
晴れて国試に合格したものの、紅秀麗と杜影月は、まさしく今、辛く苦しい、下積みの時を経験していた。

靴磨きの影月。
影月「はい、出来上がりました」
影月を見ている絳攸。



府庫。
絳攸「はぁ……」
(あれ、王様業の肩代わりはいいのかな絳攸)
楸瑛「やるせないため息だねぇ。君のそういう顔なかなかそそるよ?」
(うぎゃー誰か助けてえぇぇ←タイピングしてても鳥肌)
絳攸「冗談もたいがいにしろ。俺は今機嫌が悪いんだ」
楸瑛「秀麗殿は頑張っているね」
少し心配そうな絳攸。
絳攸「頑張りきれるかどうか…」
楸瑛「いざとなれば、あの方が動くだろう」
絳攸「…もう動いているかもしれん」
楸瑛「そうだなぁ、これだけかわいい姪がいたぶられてるんだ。主上に皮肉の一つや二つや三つ言いに行ってるかも」
(その通り)



劉輝の執務室。
黎深「今年度の進士上位二十名においては、まず朝廷に留め置き様子を見るようにしたそうですね」
劉輝「父の時代にも、たまにそういうことがあったと聞いている」
黎深「ええ、私の時も絳攸の時もそうでした。どこへ振り分けるか迷う人材が上位を占める時には、こういう手段が取られるようです。
まぁ妥当でしょう。
紅秀麗と杜影月の二人をいきなりどこかの部署に配属したら、能力を発揮する前につぶされるでしょうからね。
それではもったいない」
劉輝「そなたなら、潰れて行く者はそれだけの器量と、切って捨てそうなものだがな」
黎深「もちろん切って捨てますとも。
それなりの場を用意されてそれなりの結果も出せないよう者はね。
私は弱い者も甘ったれも馬鹿も大嫌いですから。昔のあなたを含めて」
苦笑しかない劉輝。
黎深「ですが今回の場合は条件が悪すぎます。
若い芽をいきなり水中に投げ入れるようなものですから。
救い出して土に置いてやるぐらいはしないと。
本人の努力とは関係なしに腐るだけです」
劉輝「心配せずとも、そなたの姪は守る。必ず」
黎深「女人国試登用制度の草案を書いたのは主上、あなたです。自ら作った制度をうまく活用できなければ、私はちゃちゃっとあなたに見切りをつけますからね。では」
立ち去ろうとする紅吏部尚書に。
劉輝「紅尚書」
立ち止まる黎深。
劉輝「秀麗の後見を引き受けてくれて、ありがとう」
黎深「別に。主上のためでは全くありません」
立ち去る黎深の背中に。
劉輝「余は実は…そなたのことが結構好きなのだが」
黎深「私を寝台に連れ込もうとするなど、100年早いですよ」
そういうわけではなくて…という表情でこめかみをかく劉輝。



府庫。
桃饅頭を囲んでいるのは紅黎深、藍楸瑛、李絳攸。
黎深「兄上の顔を見て心を癒そうと思って来たのに」
絳攸「あいにくと、邵可様は御用時で城下へ」
黎深「まったく、本当なら秀麗をいじめる奴らは全員即刻クビにしたいくらいだ」
絳攸「人事を握っている吏部の尚書が言うと、洒落になりません」
黎深「ふん。あれだけ脅しをかけても主上が動かなかったら本当に見切る」

絳攸『やっぱり』
楸瑛『主上のところへ…』

絳攸「黎深様、いくら後見人とはいえ、あまり出すぎたことをすると、秀麗殿が困りますよ」
黎深「だからいまだに後見人であることも名乗り出ていないんだ」

とその時。
邵可「おや、黎深。来てたのかい」
黎深「ああ、兄上!」
邵可「おいしそうな桃饅頭だね」
黎深「兄上に食べていただこうと思って」
邵可「ありがとう。さっそくいただこうかな」
黎深「はい」
邵可「あーちょうどお腹が空いていたんだよ」
黎深「本当ですか」
邵可「ああ結構結構、いただきましょう」
そんな二人を見て、表情がくもる絳攸。



回廊から庭に下りて考える絳攸。
花をつけているのはすももの木。

絳攸『やはり黎深様にとって大切なのは…』

秀麗「絳攸様?」
振り返ると、秀麗が本を抱えて立っていた。
秀麗「すみません、私は新人官吏で、もう官位も違うので、親しく話しかけるのはいけないと思っているのですけど…」
絳攸「けど?」
秀麗「何か気を落とされるようなことでもあったのですか?」
答えられない絳攸。
秀麗「そうだ、絳攸様に聞きたいと思っていたことがあるんです」
絳攸「なんだ」
秀麗「絳攸様は16歳で状元及第なされたんですよね」
絳攸「それがどうかしたのか」
秀麗「絳攸様にはどんな思いがあったんですか? 上へ上ろうとする努力を支えた絳攸様の強い思いはなんなんですか?」

絳攸は夕暮れの空を見上げた。

絳攸「俺の思いなど簡単なものだ。
ある人のそばにいて、その助けになりたかった。
その人はたくさんのものを与えてくれたから、少しでも恩返しがしたかった。
それだけだ。
お前より、遥かに不純な動機だろ?」

秀麗「かなったんですか、その思いは」
絳攸「どうだかな。あの人は多分、俺などいてもいなくても、何も変わらないかもな」
秀麗「でも、誰かへの思いが自分を支えるって、素敵ですね」
絳攸「……」
秀麗「私も頑張ろうっと!」
そんなけなげな秀麗に。
絳攸「あとで、差し入れを持ってってやる」
秀麗「ありがとうございます」

府庫へ走っていく秀麗を見送り、自分も行こうとしたその時。

「おや絳攸殿、どうかなされましたかな。何か問題でも?」

蔡礼部尚書が絳攸に声をかけた。振り返る絳攸。
絳攸「何か問題でも? 蔡尚書、あなたは確か、新人官吏の指導係のはずでしたね」
蔡尚書「それが何か」
絳攸「紅秀麗と杜影月の二人を見て、何も思われないのですか」
蔡尚書「私におっしゃられましても、あの二人に厠掃除や靴磨きを命じたのは魯官吏ですからな。それより絳攸殿」
絳攸「?」
蔡尚書「あなたは紅尚書の御養子ということですが、いまだに紅姓を賜っていらっしゃらないのですな」
絳攸「…!」
蔡尚書「紅尚書にはお子がいないというのに、あなたを紅家に迎え入れる気はないということでしょうな。
ああ、あの方は気まぐれで冷酷だ。
いつまたあなたを身一つで放り出してもおかしくはありません。
私はあなたの才が惜しい。
もう、あのことを怒ってはおりません。
独立される際には及ばずながらこの私が」
絳攸「失礼します」
話の途中でその場を去る絳攸。



(絳攸の回想)
絳攸少年が街道の道端で店を広げていると、一台の豪華な馬車が止まった。
小さな窓が開いて、男が絳攸少年に聞く。
男「お前は何を売っているのだ」
絳攸「くじです」
男「なるほど。そこのがらくたはくじの景品か?」
絳攸「冷やかすならお断りです」
男は馬車から降りてきた。金を払い、くじを引く。
引かれたくじを見て、絳攸は花が咲いている一つの枝(すもも)を手にする。
絳攸「残念賞です」
男「すももの花か。どうせ当たりくじなどたいして入っていないのだろう。なかなかいい商売だな。考えたのはそなたの親か?」
絳攸「…親は…いません」
男はしばらく絳攸を見下ろしていたが、突然。
男「よし、お前にしよう」
絳攸「え」



回廊ですももの花を見上げながら。

絳攸『拾われた時も気まぐれだった…まるで子犬をうちに連れ帰るように』

その時。
黎深「こんなところで何を突っ立っている」
絳攸「あ…!」
養い親が絳攸を見つけた。
黎深「迷子になったら近くの人に道を聞きなさいといつも言ってあるだろう」
絳攸「すももの花を見ていただけです。あなたこそどうなさったんです? 随分とご機嫌が悪そうですが」
黎深は扇で絳攸のあごを持ち上げる。
黎深「どうかしたのはお前のほうだろう? 絳攸」
絳攸「……なんでも……ありません……」
黎深「…まあいい。紅本家から使いが出たらしい」
絳攸「紅本家から?」
黎深「まさかとは思うが、お前のところに来たら即刻たたき出せ。どうせろくな用じゃない」
立ち去ろうとする黎深の袖を、思わずつかむ絳攸。
黎深「…なんだ?」
絳攸「わ、私が、もし今、おそばを離れて、全国津々浦々点心修行に出たいと言ったら、どうされます?」
黎深「お前が、点心修行?」

絳攸『何を言っているんだ、俺は…』

黎深「方向音痴のお前が旅に出てどうするんだ」
絳攸「ほっといてくださいっ」
黎深「…行きたいなら勝手に行けばいい。お前の人生だろ、私に聞くな」
立ち去る黎深の背中を見送る絳攸。



台所にて、蒸し器を前に腕を組んでいる絳攸。
蒸し器のふたを開けてみるが、思うようにできないしゅうまい。
絳攸「…やはり修行に出るか…」



府庫に向かっている絳攸。
絳攸「おかしい…こっちが府庫だと思ったのに…」
(迷っています)
とちょうどその時、影月とばったり出会う。
会釈してそばを通り過ぎる影月。
チャンスとばかりに影月を引き止める絳攸。
絳攸「府庫へ行くのだろう? 付き合ってやる」

府庫に着くと、秀麗が仕事をしていた。
絳攸「秀麗、差し入れだ」
秀麗「あ、絳攸様」
絳攸「うちで点心を作ってきたぞ」
秀麗「絳攸様のお家って、確かどなたかのお屋敷に間借りしてらっしゃるんですよね」
絳攸「あ、うん…えー、子供の頃から世話になっている方の屋敷に、住まわせてもらっているのだ。それより、温かいうちに食べろ」
大量のしゅうまい。見た目は良くないのだが。
絳攸「さあ遠慮するな」
とりあえず食べてみる二人。
秀麗「ああえび、プリプリですね」
影月「かにしゅうまいもおいしいです。見た目は悪いけど、おいしいですね」
秀麗「影月君…」
影月「あ、す、すみません。じゃあ今度はえびしゅうまいを」
いちおう、絳攸も口にしてみる。

秀麗「あーおいしかった。ありがとうございました。これでまた頑張れます」
影月「そうですね。仕事に戻りましょうか」
絳攸「本当に頑張るな、二人とも」
秀麗・影月「?」
絳攸「いろいろとつらい目にあっているのに」
秀麗「一番辛いのは、大切な人たちが悲しい思いをしたり、苦しんだりすることだから…だからそんなことのない国を作るためにがんばります」
影月「僕たちの頑張りなんて、どのくらいこの彩雲国の役に立つか、分かりませんけどね」



府庫を出る絳攸。
それを見ていた蔡尚書と魯官吏。
蔡尚書「絳攸殿は今府庫から出てこられましたかな」
魯官吏「そのようですな」
蔡尚書「確か今府庫には、紅秀麗と杜影月がいるはずだが」
魯官吏「絳攸殿は紅秀麗が適正試験を受ける前、よく紅家を訪れ、勉強を教えていたようです。
適正試験の制度は、主上が紅秀麗のために作ったようなもの。
本来なら、国試の最終試験である会試を受けるためには、一年かけて様々な試験を潜り抜けなければなりません。
ですが、紅秀麗の場合、適正試験に合格すれば会試を受けても良いとされました」
蔡尚書「特別な措置だったからこそ、随分厳しい試験だったように思うが」
魯官吏「しかしあらゆる点で、紅秀麗は恵まれすぎています」
蔡尚書「というと」
魯官吏「女人が国試を受ける場合、高官か大貴族の後ろ盾が必要とされてきましたが、紅秀麗の後見人は紅黎深殿だそうです」
蔡尚書「ほぉ…ふむ…」



一人で飲んでいる絳攸。
楸瑛「おや、珍しいねぇ。君が酒なんて」
絳攸「あっちへ行け」
楸瑛「寂しいなら付き合おうか」
絳攸「別に寂しくない!」
と、向こうに静蘭の姿が。
楸瑛「ああ静蘭! 君も付き合いなさい」
静蘭「いえ、私は…」
絳攸「そうだ付き合え! だいたいなぁ、俺がこんなところで一人で飲んでいるのは、元はといえばお前のせいなんだからな!」
楸瑛「へぇ。だそうだよ」
静蘭「……」
あきらめたように彼らの元へ向かう静蘭。
そしてその静蘭を見つけた青年がもう一人。
劉輝「! あに…う…え」
ところがそこには楸瑛と酔っ払った絳攸の姿もあり。
楸瑛「主上」
絳攸「何だ今のうえっていうのは」
劉輝「あ、いや」
絳攸「お前も座れ!
劉輝「え」

月夜に咲きほこるすももの下で、飲んでいる4人。
静蘭「それで、絳攸殿が飲んだくれているのが私のせいだというのは」
絳攸「いや、たいした話じゃ…」
静蘭「そうおっしゃらずに。興味深いお話じゃないですか」
楸瑛「絳攸、あきらめて話せ」
劉輝「あに…あ、いや、静蘭の話なら余も聞きたい」
絳攸「つまりその…話は、俺がまだ無力だった少年時代にさかのぼる。俺はいきなり黎深様に拾われ、屋敷に連れて行かれた。何の説明もなしに。俺は聞いてみた。なぜ拾ってくださったのですかと」
劉輝「ひと目で溢れる才能を見抜いた!」
楸瑛「子犬のようにいたいけだった」

絳攸「違う! 身代わりだ!

静蘭「身代わり?」
楸瑛「誰のだ」
絳攸「俺が拾われたのはかれこれ13年前だ。当時紅邵可邸では何が起こっていた?」
静蘭「!」
劉輝「! まさか」
絳攸「敬愛する兄上が先ごろ一人の少年を拾ったそうでな、私もそのご苦労を疑似体験すべく適当に誰か拾って育ててみることにした…だそうだ! でちょうど目に付いたのが!」
絳攸少年だったと…
一同唖然。
絳攸「あの時、俺の人生は一度終わった…」
と、いきなり静蘭の胸倉をがっしとつかみ。
絳攸「お前は邵可様だからいい! だが俺はあの黎深様だぞ!」
でも、と静蘭から手を離し。
絳攸「だが、今の俺があるのはお前のお陰だ」
楸瑛「……」
絳攸「まあ飲め! いや、俺が飲む!」
いきなり酒瓶ごと飲み始めた絳攸を、楸瑛は慌てて止めて。
楸瑛「ああ分かった。もう帰ろう。送っていく」
絳攸「帰りたくない!」
静蘭「だ、大丈夫ですか?」
楸瑛「ああせっかくだから、主上と水入らずで語り合ってくれ。さ、行くぞ」
絳攸「やめろぉ! もっと飲ませろー!」
楸瑛「あーこれ以上飲んだら屋敷に着く前に倒れるぞ」
絳攸「…そしたら、また拾ってくれるかな…いや、くれないかも…」

絳攸を抱えて帰っていく楸瑛を見送って。
静蘭「絳攸殿も、あんなふうに酔われることがあるのですね」
そんな静蘭の腕をつかんだもう一人の酔っ払い。
劉輝「あにうえぇぇ」
静蘭「あなたも酔っているのですね主上」
劉輝「私は、無力です。秀麗があんなに苦労しているのに、陰から見守ることしか…」
めそめそと呟く劉輝。(泣き上戸かあんたは)
静蘭「陰からで十分です。お嬢様の道を開いたのなら、精一杯支えて差し上げてください。私は……あなた以上に何も出来ない」
劉輝「……」
静蘭「私も帰ります。部屋までお送りしましょう」



紅黎深の屋敷。
絳攸「ああ…飲みすぎた…」
と、黎深が絳攸を見つけて。
黎深「やれやれ、何だそのていたらくは。まったく、そんな情けない男に育てた覚えはないぞ」
だが、そんな黎深に絳攸は。
絳攸「だったら、もっと黎深様のお気に召すような子供を、拾って来たらいいじゃないですか!」
走り去る絳攸。
黎深「………」



紅邵可邸。お茶を入れている静蘭。
邵可「秀麗は昨晩も府庫に泊まったようだね」
静蘭「ええ。頑張っていらっしゃるようです」
邵可「君も、本当にお茶をおいしく入れられるようになったね。昔は茶碗に直接お茶葉を入れて、お湯を注いでいたっけ」
静蘭「…昔のことは忘れてください」
そんな静蘭に。
邵可「静蘭」
静蘭「はい?」
邵可「君は君の思うとおりに生きなさい。君を拾って妻と一緒に名前をつけた時から、私は君を実の子のように思っているよ」
静蘭「旦那様…」
邵可「親は子供の重荷になるべきではない。だから私のことは何も心配いらない。秀麗の配属が決まるまで、まだ時間はある。ゆっくりと考えなさい」
静蘭「……」
ふと、思いついたように顔を上げる静蘭。
静蘭「旦那様」
邵可「ん?」
静蘭「今夜悩める若者を一人、うちに招待してもよろしいでしょうか」
邵可「?」



靴磨きに精を出す影月。
とそこへ。
「頼む」
靴を台に載せた兵士が一人。影月は見上げて少し驚く。
影月「王様の靴を磨くのは初めてです」
劉輝「辛くはないか」
影月「いいえ、靴磨きもたくさん勉強になりますから」
劉輝「そうか」
影月「僕のことより、秀麗さんのことを気にかけてあげてください。ずっとずっと大変です」
劉輝「…影月」
影月「はい」
劉輝「そなたにこれを」
影月「なんですか?」
差し出された包みを開くと。
影月「うわっ」
劉輝「王家の紋印だ。何かあった時にこれを使え」
影月「え、でも、これはむしろ静蘭さんが持っていたほうが」
劉輝「いや、今の静蘭では、ずっと秀麗のそばにいることは許されない」
影月「……分かりました」
頷く劉輝。

そんな二人を遠巻きに見ている静蘭。

静蘭『悩んでいるだけで何も出来ないのは、私だけか……せめて…』



庭院でたたずむ絳攸を見つける静蘭。
絳攸「邵可様が?」
静蘭「ええ、ぜひおいでくださいと」
絳攸「何の用が…」
静蘭「確かにお伝えいたしました。では」
不審に思う絳攸。

絳攸『なんだろう…』



その夜、紅邵可の家へ来た絳攸。
(無事にたどり着いたらしい)
絳攸「ごめんください」
門を入るとすぐ、声をかけられた。
邵可「絳攸殿、いらっしゃい。どうぞこちらへ」

見事に花をつけているすももを見上げながら。
絳攸「珍しいですね。邵可様が私を呼び出すなんて」
邵可「あなたがそんな顔をしているよりは珍しくないと思いますよ」
絳攸「……」
邵可「あのすももの木は、今年黎深から贈られてきたのです。主上が桜の木を送ったと聞くや否やね」
絳攸「すももは、桜よりも先に咲くからですか」
邵可「いえ、あれは昔から、花でも実でもすももが一番好きでしたから」
絳攸「ですが屋敷には、すももなど一本も…」

邵可「好き嫌いを素直に示す弟ではありません。
あれは紅家を好いていません。
それでも紅家の当主になることからは逃れることが出来なかった。
あなたには縛られて欲しくなかったのだと思います。
紅家の姓を与えれば、あなたはそこにうずまく醜い闇に巻き込まれていく。
黎深でさえ抜け切ることができなかったのに、大切な人をどうして道連れに出来ますか」

絳攸「…!」

邵可「あなたには好きな道を選んで欲しい。
だからこそ、あえて李という姓を与えたのだと思います。
李とは、すもものことでしょ?
絳攸の絳は、紅よりもなお深い深紅。
攸は水の流れるさまを示します。
あなたが自分の子供だという誇りと、流れる水のように自由に生きて欲しいという願い。
弟ながら、良い名をつけたと思いますよ」

絳攸のお茶に、すももの花びらが落ちる。
絳攸「…知りませんでした…」
邵可「親の心子知らず。それでいいとは思いますがね」

絳攸は邵可の前に立った。
絳攸「邵可様」
邵可「はい?」
絳攸「ありがとうございます」
邵可「お礼なら静蘭に。あなたの悩みを聞いてやってくれといったのはあの子です」
絳攸「…はい」
邵可「あ、それと藍将軍にも」
絳攸「え」
邵可「彼にも言われていたのです。絳攸殿は口が重いから、黎深がらみのことは私にしか話さないだろうとね」
絳攸「…!!」
邵可「良いご友人をお持ちになりましたね」
言葉がない絳攸。
(原作では“あとで殴る絶対殴る”と思っていたらしい)



絳攸「楸瑛! 余計なことを!」
楸瑛「静蘭は良くてどうして私はだめなんだ」
絳攸「どうしてもだ!」
楸瑛は苦笑した。
楸瑛「やれやれ、紅家の人々の人望と人の心をつかむ術はすごいねぇ」
その言葉に、ふと考える絳攸。

絳攸『俺と黎深様は邵可様に握られ、王は秀麗に握られ、静蘭という優秀な家人がいて…』

この先を考えるのが怖い。
絳攸「邵可様たちがその気になったら、あっさりこの国はのっとられそうだな」
楸瑛「ああ」

自信を取り戻した絳攸であった。









上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。