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彩雲国物語 第1シーズン 第十四話 石の上にも三年

アニメ「彩雲国物語」を文章で見たい!という方のために。
(管理人のツッコミつき)


『』=モノローグ
ナレ:=ナレーション

地上波再放送(金曜深夜)にあわせてレビューしています
キャストについては、公式HPを参照のこと

★第14話は秀麗と影月が官吏としていじめられるお話です★





ナレ(邵可):
春のはじめのこの日、国試に及第した秀麗は、晴れて進士式を迎えることとなった。
彩雲国初の女性官吏としての第一歩である。

紅邸、門のところで、白い進士服に身を包んだ秀麗を見送る邵可と静蘭。
静蘭「よき日ですね、今日は」
秀麗、二人に一礼して。
秀麗「父様、静蘭。それでは行って参ります」
邵可「うん、頑張っておいで」
秀麗「はい!」




劉輝の部屋。
式に備えて身支度を整える劉輝。
楸瑛「お支度は、整われましたか?」
劉輝「ああ。皆揃ったか」
楸瑛「ええ、ほぼ。ま、一人来てない者もいますが…」
劉輝は小さく笑った。
(いわずもがな、である)

部屋を出て。
劉輝「良い日だな」
楸瑛「ええ」



回廊にて。
黎深「ああ、良い日だね絳攸。お前が16歳で第一位及第して、酒宴で高官たちにぜひうちの婿にと追っかけられて、逃げ回ってた日と同じ空の色だ」
絳攸はむすっとなるが、ふと養父の横顔がどこか嬉しそうなのに気づく。
黎深「なんだ、絳攸」
絳攸「いえ、あの、黎深様が後見についたこと、秀麗殿にはまだ伏せているのですか」
黎深「…叔父だと名乗るのが先だ」
絳攸「では当分先ですね」
(うむ、的を得た返事だ、絳攸)
黎深「楽しみは先にとっておくものだ」



進士式の会場(多分奉天殿)に到着する黎深と絳攸。
「吏部尚書、紅黎深様、吏部侍郎、李絳攸様、御入殿でございます」
新しい進士たちが勢ぞろいしている。
黄奇人「李絳攸たちが及第した時以上の騒がしさだな」
景侍郎「それはそうでしょう。何しろ上位三名があのような…」

高官たちが噂している。
「杜影月、わずか13歳で第一位及第、絳攸殿の記録をあっさり抜くとは…」
「第二位は、藍楸瑛殿の弟龍蓮か」
「進士式をすっぽかすなど前代未聞」
「今年は変な年だよまったく。女人受験が導入されたと思ったら第三位でいきなり及第とは…」
「あの女人、前に後宮に入った姫に似てないか」
「そう言われれば…」
「それより去年の夏、戸部で働いていた少年のほうが似ているな。兄弟なのかも知れん」

それを耳にして。
景侍郎「これから大変ですねぇ」
黄奇人「覚悟の上だろう。私たちは待つだけだ。ここまであの娘が這い上がってくるのを。そうだろう黎深」
黎深「ああ。その通りだ」

「彩雲国国王、紫劉輝様、御入殿でございます」
劉輝が入ってくる。

宋太傅「ようやく始まるな」
霄太師「ああ、見せてもらうとするかの。若者たちが作る、新しい時代を」
王座についた劉輝。

進士たちの名が読み上げられる。
「本年度、第一位及第者、状元、杜影月」
影月「はい!」
「第二位、榜眼、藍龍蓮」
返事はない(ちょっと気まずい)。
「第三位、探花、紅秀麗」
秀麗「はい」
「以上、第一甲第三名、唱名いたしました」
満足そうな劉輝。



コウ娥楼。
※コウ娥楼の「コウ」は「女+亘」ですが、機種依存文字のためカタカナ表記しています。
胡蝶に報告しようと入ってくる秀麗。
秀麗「あ……胡蝶妓さん!」
胡蝶「?」
秀麗「今日、無事に進士式を終えて…」
胡蝶「悪いんだけど秀麗ちゃん、しばらくここへは来ないでもらえるかしら」
秀麗「え?」
思わぬ反応に驚く秀麗。



街道。しょんぼりしながら家への道を歩く秀麗。
秀麗「ああ、お塩買って帰らなきゃ」
店へ入る。
秀麗「お塩、一袋下さいな」
主人「はい! あ…」
急に態度がよそよそしくなる主人。

秀麗「早く帰らないと、絳攸様と藍将軍がいらっしゃる時間になっちゃう」
ふと、顔見知りのおばさんを見つけ、声をかける。
秀麗「おばさん、あれから腰の具合どう?」
おばさん「ああ、ええ…」
(このおばさんの声は山像さんかな)
そそくさと行ってしまう。
周りの人たちの反応が、以前と違うことに気づく秀麗。



コウ娥楼。ある一室に入る胡蝶。
胡蝶「失礼します」

「馬鹿な! あの指輪を失くしただと! あれは茶家の当主のしるしなんだぞ。見つけたばかりだというのになんということだ」
一人の男が部下の男たちに怒鳴り散らしている。
「もう見つかったと連絡してしまったんだぞ。ないと知れたら、大金と昇進の機会が水の泡ではないか」
そして部屋を出ながら胡蝶に言う。
「胡蝶、悪いが今宵は暇するぞ」
胡蝶「それは残念ですこと」



外朝。
絳攸が疲れ果てた様子で入ってくる。
楸瑛「ここに来るのにまた迷ったのかい?」
絳攸「うるさい。それより、このところお前がまた妓楼に通いつめているという噂があるが」
楸瑛「妬かないでくれよ。私も健康な成年男子なんだから」
絳攸「妓楼より医者に通いつめて、その腐れ頭をすげ替えてもらえ!」
楸瑛「ちゃんと仕事はしてるって。例の指輪が見つかったと報告が来たよ」
絳攸「なにっ」
楸瑛「でも、すぐになくなったらしいけどね」
絳攸「なんだそれは。何かの冗談か」
小さく笑って。
楸瑛「では、そろそろ秀麗殿の手料理をいただきに行こうか。今日はお祝いだ」



家への道をとぼとぼと歩いている秀麗。

秀麗『私は何も変わってないのに……』

と、何かにつまづく秀麗。
秀麗「うわ! いった…」

「あ…秀麗さん」

秀麗「影月君?」
秀麗は倒れていた影月の汚れ具合を見て。
秀麗「まさかまた暴れたの?」
影月「ん…どうやらそうみたいですー」
秀麗「良かった。人が変わったあんたに出くわさなくて」
その時。
静蘭「お嬢様! 探しましたよ」
秀麗「静蘭」
影月「静蘭さん」
静蘭「ああ、影月君も一緒だったのですね」
影月「はい」
静蘭「お嬢様、あれほど一人での外出は避けるようにと申し上げたのですが。進士は俸禄をもらったばかりですからね。ごろつきの格好の餌食なんですよ」
と、静蘭は影月の格好を見て。
静蘭「影月君、まさかもう餌食になったのでは?」
影月「違います、俸禄の銀80両は、すぐに全部郷里に送ってしまったので」
静蘭「全部、ですか?」
影月「はい」
秀麗「じゃあ、暴れたのは何で?」
影月「僕が覚えているのは…どこかの貴族のお屋敷で、無理やりお酒を飲まされて、娘を嫁にどうかといわれて…」
秀麗「貴族のお屋敷で暴れたの?」
影月「いえ、お酒を飲まされた直後すぐに飛び出したので、大丈夫だと思いますが」
秀麗「これからは、酒宴の誘いは全て断ったほうが無難だわね」
静蘭「影月君は、状元及第ですからね。上位及第者はさまざまな特権が付されますし、将来有望な官吏に今からつなぎを持とうとする輩が多いのは、仕方ないですね」
影月「ああ、なるほど、そういうことだったんですか」
秀麗「それより影月君、故郷に及第の文は出したんでしょうね」
影月「いえ、礼部から連絡の早馬を出してくれるというお話だったので、その早馬にお金だけ託して…」
秀麗「…あとで料紙をあげるから、今日中に文を書きなさい」
影月「え、でも」
秀麗「でもじゃないの。故郷の人たちに、ちゃんと合格の連絡しなきゃ。影月君が自分で報告してあげたほうが、待ってる人も、ずっと嬉しいでしょう?」
影月「…秀麗さん…」
秀麗「それにね、お金の安全のためにも、絶対書かなきゃだめよ」
影月「え、お金の安全、ですか?」
秀麗「そうよ、銀80両を全部送っちゃうなんて。礼部の早馬だって、届け手によっちゃ、送ったお金が向こうにつくまでに、半分に減ってることもあるのよ。せめて盗むのもばかばかしくなるくらいの金額に、小分けして送るべきだったわ」
影月「え、そうなんですか? さすが秀麗さん、しっかりしてますねぇ」
静蘭「お金のことに関しては、お嬢様の右に出る人はなかなかいませんよ」
秀麗「もう、二人とも」
笑う影月と静蘭。



紅邸。夕食が並ぶ。
邵可「そういえば、秀麗たちの配属先はいつ頃決まるのですか、絳攸殿」
絳攸「ああ、それに関しては、いずれ通達が来ると思いますよ」
邵可「ああ、なるほど」
楸瑛「今年は波乱に満ちた国試でしたからねぇ」
絳攸「お前の弟は進士式をすっぽかすしな」
楸瑛「…あれに関しては、私も把握範囲外なんだ。いつ逃げるかなぁと思っていたが、さすがに早かったな」
絳攸「兄が兄なら弟も弟だな。まったく兄弟揃ってふざけた奴らだ」
フォローしようと影月が言う。
影月「えーっと、いろんな意味ですごい人でしたよね。外見も中身も…」
秀麗「ほんとよね。
はっきり言ってあの男が第一位及第だったら私、この世の無常に絶望していたわ。
みんな必死で勉強してんのに、宿舎では寝てばっか。
たまに起きたかと思うと、ぴーひょろ笛吹いてんのよ。
おまけに人が作ったものをたらふく食べた後に、
そなたが嫁に行き損ねた暁には、私専属の料理人として召抱える、
って真顔で言われた時は、本気でけり倒してやろうと思ったわ。
藍将軍の弟さんだから必死で我慢したけど…」
楸瑛「…それはどうもありがとう…」
(というしかないわな)
秀麗「あ、すみません、私ったら…」
(もう遅い)
絳攸「いいんだ秀麗、全て本当のことなんだからな」
邵可「とにかく、明日から楽しみだね、二人とも」
秀麗「はい。頑張ろうね、影月君」
影月「そうですね」



翌朝。外朝へ向かいながら。
影月「どこへ配属されるか、楽しみですね」
秀麗「そうね。どこになるのかしら……でも、できれば中央宮あたりには配属されたくないわね」
ふと、夏の出来事が頭をよぎる。

秀麗『あーどうしよう。黄尚書にばれるわよね…って、とっくにバレてるかも』

影月「秀麗さん、がんばりましょうね。とりあえず僕、隣にいますから」
秀麗「ありがとう、影月君」



礼部に向かう途中、回廊で黄尚書と景侍郎に出会う。
秀麗「こ、黄尚書」
道を譲って、二人が通り過ぎるのを待っていたが。
秀麗「あの、黄尚書。昨年の夏は…」
黄尚書「何のことだ?」
秀麗「え? 私が、紅秀という名で…」
黄尚書「私の知る紅秀は、まあまあ出来のいい少年だった。そなたも見習うといい」
秀麗「…はい」
景侍郎「それよりお二人とも、こんなところでのんびりしていて、大丈夫なんですか」
秀麗・影月「え?」
その時、一人の兵が駆け寄ってくる。
兵「二人とも、こんなところにいたのか。遅刻するぞ」
秀麗・影月「ち、遅刻?」
顔を上げた兵士を見た二人は。
秀麗・影月「うわ!」



礼部へ庭を走りながら。
秀麗「書状の時刻が間違ってるですってぇぇ!? 冗談じゃないわよ!」
影月「初日から遅刻だなんて」
兵=劉輝「そなたたちをねたむ誰かの嫌がらせだろう」
秀麗「随分嫌われたものね」
劉輝「あそこを突っ切ったほうが早い」
藪の中に飛び込む。
秀麗「前途揚々やってきたのに、これじゃ前途全難だわ」
劉輝「だから余が来たのだ。しばらく王様業の大半は、完璧に仕事をしてくれるある者に任せた」
(か、かわいそうな絳攸…)
秀麗「は?」
劉輝「余…いや私は、今日からそなたら付の武官になる!」
秀麗・影月「はぁぁ!?」



礼部に到着。
秀麗「何とか…」
影月「刻限には、間に合ったみたいですね…」
劉輝は二人を見下ろし。
劉輝「二人とも、遅くなったが、及第おめでとう」
そう言って、小さな黄色い花を差し出す。
秀麗「え?」
劉輝「あ…」
花はしおれていた。
影月「よれよれですね」
劉輝「摘んだまま懐にいれておいたから……今のはナシだ」
だが秀麗はそれを受け取る。
秀麗「福寿草ね…ありがとう、これで十分よ。じゃ、行ってくるわね」
黙って二人を見送る劉輝。



すでに進士たちが集まっている。
「ほんとに来たぜ」「身の程知らずが」
「女人受験などと」
「一人も及第者がなくば、面子がつぶれるからと、温情で通したんだろうよ」
「せっかくの及第の喜びも、女と一緒じゃ半減だ」
「13歳で状元だと?」
「いったいどんな手を使ったんだか」
「女といいガキといい、今年はふざけてる」
(このガヤの中に、檜山氏や真殿氏の声があったと思う!)
二人への冷たい陰口の中、一人の少年が二人を見ていた。

「蔡礼部尚書、魯礼部官のおなりでございます!」

礼部尚書と魯官吏が入ってくる。
蔡尚書「改めまして、国試及第のお祝いを申し上げます。
今年は主上の命により、あなた方上位二十名は、一時朝廷預かりとなりました。
限られた期間ではありますが、この機会を生かし、少しでも多くのことを学んでください。
二ヵ月後、能力に応じて正式な配属先が決まることとなります。
それまでは、あなたたちの指導官を務めるのは、この魯礼部官となります。
皆さんを良く導いてくださるでしょう」
そうして魯に言う。
蔡尚書「魯礼部官、彼らはまだ官位も拝命していないのだから、どうぞお手柔らかに」
魯官吏「分かっています」
心配そうな顔をしながら、蔡尚書はその場を去る。

魯官吏「上位二十名に食い込んだ君たちは、主上の身を馳せる進士であり将来この国の中枢を担う可能性が大きい。
よってこれから二ヶ月間様々な実務を任されるだろう。
その中でひと月半後には、それぞれ自分が思ったことをまとめ、提出してもらう。
提出先は私でなくてもかまわない。
連名でも良い。内容も形式も自由だ」
ふと、魯は秀麗と影月の汚れた格好を目にする。
魯官吏「紅進士、杜進士。随分と官服が汚れているようだが」
影月「あのー、これは」
魯官吏「口答えは結構! 身だしなみがなってない。ここを鳥小屋と勘違いしているのか」
秀麗・影月「すみません」
魯官吏「自覚が足りないようだな。よろしい。あとでふさわしい仕事を割り振ろう。それでは仕事と研修先を告げる。細かい仕事は各人、研修先にて聞くように」



というわけで、秀麗が来ているのは厠(トイレのこと)。
秀麗「ふ、上等じゃないの…こんなんでへこたれると思ったら大間違いよ! 厠掃除なんて、賃仕事で慣れてるんだから! はーそれにしても臭いわね。お偉い官吏様も出すものは同じってことね」
(嫁入り前の乙女がなんてことを…)
厠に花を生ける秀麗。
秀麗「まあこれで、厠もちょっとはマシよね」
と、その時。
「ほーくさいくさい、豚の匂いがするぞ」
「汚らしいですねえ、厠といえど神聖な朝廷を歩き回られるのは不快ですな」
「ふん。そういえば聞いておるか? 例の…」

秀麗『これくらいじゃ、へこたれないわよ』
(その背後で↓)
(「ああ、かなりの額が動いているようですねぇ」)
(「どうやって調達しているのやら」)

別の場所では、影月が靴磨きをしている。
官吏「いや悪いねぇ、状元様に靴磨きなどさせてしまって」
影月「いいえ、お仕事ですから」
官吏「黒州のど田舎でかつかつの生活をしていたという君には、慣れた仕事かねぇ」
影月「ええ、そのとおりです。あ、こんな立派な靴は磨いたことはないですけど。はい、できま…」
影月の顔を、わざととらしく蹴る官吏。
官吏「おおっと、ちょっとふらついてしまって…」
影月「いたたた…」
と、すぐに次の官吏が。
和官吏「麿(マロ)たちは忙しいのでな。二人いっぺんにやってもらいたい」
影月「はい、喜んで」
そう言って磨き始める影月。一瞬二人は驚くが、すぐに会話を始める。
官吏「ところで和官吏、例の噂ですが…」
和「ああ、とんでもない金額らしいのお」
そんな影月を、遠くから見ている少年。
彼は碧珀明。第四位及第者だ。



二人への嫌がらせは続く。
秀麗「!!」
汲んでおいた桶の水をひっくり返されたり。

靴磨きの布を取った手をふんづけられたり。
官吏「おーすまんすまん」
影月「大丈夫です」

和官吏「書の整理は任せたぞ」
膨大な量の書類の整理を押し付けられたり。

そんな姿を見て。
景侍郎「秀くんまだ厠掃除を…かわいそうに、もう半月ですよ」
影月が靴磨きをしている後ろを通り過ぎる黄奇人と景侍郎。



戸部。
景侍郎「杜進士も状元及第なのに靴磨きのまま」
黄奇人「指導官があの魯官吏だからな。仕方あるまい。這い上がる者は、這い上がる。ほうっておけ。それより柚梨、これを」
黄奇人は景侍郎に書類の束を渡す。
黄奇人「確か、厠掃除と靴磨きは午前中までで、午後は書簡の整理などで府庫にいるのだろ? 秀麗と杜進士が府庫に来る前に、適当にまぎれさせておけ」
景侍郎「え? あなたという人は、見損ないましたよ! 今だって嫌がらせで、与えられた以上の仕事を押し付けられているというのに!」
黄奇人「だから何だ。文句は道々、その書簡でも眺めながら考えろ」
受け取った書類を見て、驚く景侍郎。
景侍郎「! これは!」
黄奇人「行け。もう文句は聞かぬ」
景侍郎「はい!」



厠の窓を拭きながら。

秀麗『石の上にも三年って言うしね…いつか報われる日が来るって思わなきゃ』

秀麗「さあここも終わったわね」
その時、厠に来た少年に出会う。
秀麗「あなたは、碧珀明君よね。どうしたの? おなかでも痛いの?」
(トイレの前で…分かる気もするが)
珀明「違う。お前、悔しくないのか? この半月というもの、ずっと厠掃除じゃないか!」
秀麗「え、えーと…」
珀明「ま、女には似合いの仕事かもしれないけどな。女のくせに、なんで国試を受けたんだ?」
秀麗「わ、私は…」
珀明「僕はお前の次点、つまり四位で及第したんだ。神童と名高いこの僕がだぞ? 厠掃除担当のお前の下だとあっては、末代までの恥だ!」
秀麗「……」
珀明「…ふんっ」
秀麗「私、この後、府庫での仕事があるから、行くわね」
なんとも思っていない様子の秀麗。
ふと、珀明は厠の窓のところの花に気づく。
珀明「……」



府庫にやってきた秀麗。
和官吏とすれ違う。
和「厠掃除は暇だろう? 麿(マロ)の部署の仕事を少し手伝わせてやる。ありがたく思うが良い。明日の朝までに頼むぞよ」
秀麗「はい、かしこまりました」
積まれている書簡は、相変わらずすごい量だ。
ため息をつく秀麗。
珀明の言葉が脳裏をよぎる。

珀明『女のくせに、何で国試を受けたんだ!』

こんなことをするために、国試を受けたわけではないことは確かだが。
秀麗は顔を上げて。
秀麗「影月君が来るまでに、少しでも減らしておかないと…」

その時。
絳攸「秀麗」
秀麗「絳攸様」
絳攸「邵可様に用があって来たのだが、留守のようだ。厠掃除は終わったのか?」
秀麗「はい」
絳攸は山積の書簡を目にする。
絳攸「? これはお前の仕事か?」
秀麗「いえ……! そうです! 影月君と一緒に引き受けた仕事です」
絳攸「そうか…」
ふと、絳攸は秀麗を見る。荒れている手、あざのある頬。
絳攸「……上がって来い」
秀麗「え?」

絳攸「これからお前はたった一人だ。
俺や楸瑛の助けは期待するな。
それでも上がって来い。
お前の目指す場所まで。
その年で探花及第したのは、俺や邵可様の力ではない。
お前の中に強い思いがあったからだ。
でなければ、17で探花はとれない。
たどり着きたい場所があるんだろう?」

秀麗「…あります!」

絳攸「この先、お前を支えるのはその望みだ。叶えられる場所まで、死ぬ気で這い上がって来い。待っている」
温かい励ましの言葉に、嬉しくなる秀麗。
秀麗「絳攸様…ありがとうございます」

と。
秀麗「絳攸様!」
絳攸「ん? なんだ? そろそろ昼時だから、俺は行くぞ」
秀麗「あのぉ…出口はそちらではありませんよ」
絳攸「なっ! この本の山が邪魔なんだ! なんでここは本がこんなにあるんだ!?」
ごちゃごちゃ言っている絳攸を見て、小さく笑う秀麗。



府庫で夜遅くまで仕事をしている秀麗と影月。
思わず舟を漕ぐ秀麗。
影月は疲れ果てて眠っている。彼に、掛布をかけてあげる秀麗。
月を見上げると、絳攸の言葉が思い出される。

絳攸『この先、お前を支えるのはその望みだ。
叶えられる場所まで、死ぬ気で這い上がって来い』

秀麗「私を支えるのは、私の望み…」

研修は続く。










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